ファーストパーソンシューティングのCounter-Strikeでは、各ゲームの開始ラウンドを「ピストルラウンド」あるいは「ピストル」と呼びます。そのゲームの特定のハーフで、どちらのチームが経済的なアドバンテージを取るのかが、ここで決まります。
そのゲームで最初にアドバンテージを取るチームを決めるジャンプボールのようなものだと考えることもできます。ただし、ジャンプボールに勝つ確率が常に半々だとすると、どちらが先取点を取るかという問題の方がより近いかもしれません。オッズというものは、常にスキルの高い方に、あるいは少なくとも試合に勝ちそうなチームの側に、わずかに寄ります。NBAの試合で、あるチームの勝ちに対するオッズが1.33だとします。先取点に対しては1.80しかないかもしれません。しかし、勝ちのオッズが1.72のチームでも、先取点に対しては1.83が付くかもしれません。ピストルラウンドの試合前オッズについても、同様のパターンが見られます。
ピストルにおけるチームの影響
ブックメーカーが付けるマージンを頻繁に打ち破り、ピストルでのベッティングで勝ち続けるというのは、非常に難しいことです。2019年中にランキング5位以内に入ったチームだけを見てみましょう。該当するチームは、合計で14チームありました。しかし、そのランク内で50マップ以上をプレイしたのは、Astralis、Liquid、ENCE、Vitality、Fnaticの5チームだけでした。これらのチームの中で、ピストル勝率が一番高かったのは、55のマップで勝率54%のVitalityで、一番低かったのは、50のマップで勝率44%のFnaticでした。
ピストルで個々のシリーズの勝敗が決まるわけではありませんが、チームはそこで戦略とスキルをある程度改善して、勝利に近付くことができます。
マップ勝率を見ると、これらの2チームが残りの12チームと完全に違うというわけではありません。Vitalityはマップ勝率45%を確保しましたが、Fnaticは少し下がって38%でした。このグループで最も勝率が高かったのはマップ勝率61%のAstralisでした。Astralisは7マップ中5マップで好成績を残して1年を終えましたが、ピストル勝率が何とか50%を上回ったマップはただ1つ、Overpassのみでした。これはただ、ピストルで最高の成績を収めなくても、最強のチームでいることは可能だということを示しています。Astralisのオッズは、上位5チームに対してすら低いものです。これを考えると、各試合の第1ラウンドと第16ラウンドで盲目的にこのデンマークチームにベットしておけば、かなりのリターンを手に入れられたことでしょう。
これらの5チームについて、2019年の上位50チームとの対戦を見てみると、ピストル勝率が50%を切ったのは、47%のENCEだけでした。ただし、ピストル勝率が50%を超えるマップも3つありました。その3つのマップでだけは、勝率も50%を上回りました。Liquidは、上位50チームに対する勝率が、5チーム中最高の54%でした。また、プレイした全マップで50%以上、つまりピストルラウンドのコンバージョン率より高い勝率を維持しました。
これが古典的な「相関関係は因果関係を含意しない」というものです。Liquidには、そのマップでのピストルラウンドを2回とも失いながら勝利した試合が多くありました。その回数を考えると、ガンラウンドで勝つことの重要性は、常にかなり高いものですし、新しいエコノミールールの下では、さらにその重要度が増します。ただし、他のすべての要素が同じだとすると、互角の戦いでは、ピストルでの勝敗が大きな差になることもよくあります。ここで勝つことが、試合をある程度左右するかもしれません。
ピストルにおけるマップの影響
このトピックでは、2019年の全期間を通してローテーションに入っていた6つのマップ、Inferno、Mirage、Dust2、Overpass、Nuke、Trainのみを取り上げます。Infernoは一番人気で3000回プレイされましたが、Trainは最も人気が低く、ここでの対戦は1900回でした。マップは、通常はデータに基づき、わずかにテロリスト(T)側、あるいはカウンターテロリスト(CT)側に寄っていると評価されます。
しかし、この割合はしばしば大きなものになります。Counter Strikeの試合の前半戦は、必ず15回行われます。これはつまり、15-0から0-15までの範囲で、30パターンの結果があり得るということです。2019年におけるCounter Strikeのプロの試合で、最もCT寄りであったマップは、CTのラウンド勝率が55.4%のTrainであり、次点のNukeをわずかに上回るものでした。より明確には、この2つは防戦するCT側が有利であるとの評判が最も高いマップですが、防戦側の勝率は5%しか高くありません。Trainでの1900戦について、ハーフタイムの時点で最も回数の多かったスコアを4つ挙げると、8-7でT優勢(374回)、9-6でT優勢(370回)、8-7でCT優勢(341回)、9-6でCT優勢(331回)というものでした。また、プレイされた対戦の約73%が、ハーフタイムの時点で8-7か9-6のどちらかでした。
スコア範囲が固定されているゲームでは、ピストルで勝利すると、1ラウンドから3ラウンドは明らかに有利になり、エコノミーを大きく強化できます。
接戦では、T側がわずかに多く勝ちました。しかし、10-5以上のスコアになると、CT側が勝つ場合が常に多くなりました。例えば、最初にCT側であったチームが0-15で劣勢になったプロの試合は1回もありませんでしたが、ハーフの時点で15-0でCT側が優勢となったことは3回ありました。このマップでは、9-6まではこれと同じパターンが見られ、面白いことにそこで逆になります。上位20チームだけを見ても、同じ結果が得られます。
したがって、60-40%の試合では、あるいは前半を6-6または7-7で引き分けている試合では、そのマップがCT側に寄っているということはできません。確かに、2019年のほとんどの期間で、大量に実行されたSGメタの影響が大きく出た可能性はあります。全期間では、Trainは54%というCT側のラウンド勝率を維持していますが、前半の60-40% (9-6/8-7)の試合では、2100回は防戦するCT側が優勢である一方、1900回はT側寄りで終わっています。
NukeをTrainと比較すると、後者はCTのピストル勝率が4%高いものの、ラウンド勝率はわずか0.3%高いだけでした。Tのピストル勝率が50%を超えるマップは、MirageとInfernoの2つしかありませんでした。ただし、どちらのマップも、T側のラウンド勝率は50%を超えていません。Dust2は、これらの6つのマップの中で唯一、攻撃側優位と考えられるマップで、2019年は攻撃側のピストル勝率は45%であったものの、マップ勝率は54%でした。
ただし、標準レベルから抜きん出たチームを比較すると、若干のバリューを見出すことができます。カウンターテロリスト側54%という平均値を使い、NoChanceとHereticsの2チームについて、上位50チームとの比較で調べてみましょう。ピストルでCT側が優位とされるDust2で、NoChanceは平均54%のCT側ピストル勝率を破ることはできませんでしたが、T側のピストルで81%という並外れた勝利を収めました。Vertigoを別とすれば、Dust2はチームにとって最も勝率の高いマップで、57%で勝っています。T側のピストル勝率が60%を超える残り2チームも、Vitalityが66%でHeroicが59%という立派な勝率でした。
Hereticsは、上位50チームに対してはCT側のピストル勝率がわずか29%でした。これは、2019年全体のDust2平均を約25%下回るものです。このチームはマップ勝率も大変なもので、35%という悲しい結果でした。CT側ピストル勝率でいうと、ENCEとNinjas in Pyjamasの2チームも戦績が悪く、両チームとも勝率が35%から40%の間でしたが、それぞれマップ勝率については46%と32%でした。
ピストルで個々のシリーズの勝敗が決まるわけではありませんが、チームはそこで戦略とスキルをある程度改善して、勝利に近付くこと、そして、マップ勝率を上げることができます。最も重要なことには、2回あるピストルのうち難しい方の勝率を上げることができるのです。
ピストルにおけるCTとTの比較
マップには、ピストルラウンドがカウンターテロリスト側に有利なものとテロリスト側に有利なものがあり、これは時々、マップの実際のラウンド勝率に現れます。この違いが生じる理由を理解するためには、最初に使う「ピストル」を比較することが必要です。CT側のピストルは、USP-SまたはP2000のどちらかですが、これらはT側のGlockよりも正確であり、与えるダメージも大きくなっています。この違いは、長距離の対決でより顕著になります。TrainとDust2は、ボムサイトまでの通路が細く、一方通行で、攻撃角度が厳しいことで有名です。どちらのマップでも、多くの場合、カウンターテロリスト側がAサイトまたはBサイトを押さえ、確実にその範囲を維持することになります。
- 参考記事:CS:GOにおけるコールアウトの説明
テロリストが一連の近接戦でサイトを支配する場合、Glockは、至近距離での交戦でそれほど邪魔にはなりません。そのため、Glockの優れた発射速度が「Glock Train」でフルに発揮されることになります。カウンターテロリスト側にとっては、戦わなければならない敵も角度も多過ぎます。接近戦の多さを特徴とするマップは、InfernoとNukeの2つです。
マップには、ピストルラウンドでCT側に有利なマップとT側に有利なマップがありますが、なぜこの違いが生じるのかを理解するには、最初に装備するピストルを比較する必要があります。
注意しなければならないのは、チームは戦略を立てることで不利な点をいくらか軽減できるということです。Overpassのピストルラウンドでは、しばしばT側がBサイトに向かうのを目にします。そちらの方がAサイトに比べてかなり狭いためです。そこでCT側はこれに対抗するため、ラウンドの最初に先制して、Bサイトに3人、場合によっては4人のプレイヤーをスタックさせる傾向があります。
T側のピストル勝率が最も高いマップはInfernoですが、ここでは、カウンターテロリスト側がラウンドの最初に中央を押して大きなアドバンテージを取ろうとする、つまり、落とされた爆弾を潜在的に制御することで、すみやかにラウンド勝利を収めようとするのを多く見てきました。また、テロリスト側が、Tec-9またはP250といった強力なピストルを主力プレイヤーの1人に持たせるという戦略もよく使用されます。これにより、性能の良いCTピストルと離れたところから交戦できるようになります。
まとめ
スコア範囲が固定されているゲームでは、ピストルで勝利すると、1ラウンドから3ラウンドは明らかに有利になり、エコノミーを大きく強化できます。各チームは相手方に対する明らかなアドバンテージを長期間維持しようと努めることになりますが、1人のプレイヤーやチームが卓越したスキルや遂行力を発揮することの難しさを考えると、そのラウンド、ハーフ、あるいはマップでの勝利についてバリューを見出すのに十分なサンプル数を得られるほどに、特定マップのピストルを得意とするチームもあるかもしれません。
より賢明なプランを策定し、それらの情報を活用する唯一の方法は、マップ、チーム、マーケットの知識を使うことです。特定のマップで、特定のチームまたは特定の相手チームについて、特定のオッズ範囲にある第1ラウンドまたは16ラウンドにベッティングすること。これが、賢明なプランであるかもしれません。あるいは、ピストルラウンドは負けることが多いがマップ勝率についてはあるしきい値を維持するチームに対するオッズを利用するのが良い可能性もあります。もしかすると、その特定のチームのバリューを考えた場合に、ピストルでの勝ち負けに過剰反応しているライブトータルやスプレッドのアドバンテージを利用することが賢明である可能性もあります。