2023年のシーズン開幕を目前に、LECでは驚くほど変化が起きているようです。新しいプレイヤー、新しいチーム、最新のフォーマットが揃い、世界中でこれまで以上に高いパフォーマンスが繰り広げられるかもしれません。さらにリーグの名称も変更されました。LECのEはEMEA (欧州、CIS、トルコ、中東、アフリカを統合した地域の新しい名称)の頭文字を表しています。
そして3つのシーズンに分けて開催されることになったため、参加チームにとって、いち早くチームワークを構築し万全の体制でシーズンを迎えることが重要となります。以上を念頭に、参加する10チームを順に見ていき、各チームのポテンシャルのみならず、短期間でどんなパフォーマンスを見せることができるかを分析していきましょう。
Astralis
トップレーンには優秀なFinn "Finn" Wiestålを割り当てています。メカにとことん強いこのスウェーデン人プレイヤーは、LECキックオフイベントで好成績を収めており、今回新たに加入したチームの頭脳として実力を発揮するかもしれません。
しかし、チームの期待を一身に背負っているのは、若き新ジャングラーDoğukan "113" Balcıのようです。18歳のDoğukanは多くの可能性を秘めたプレイヤーであるがゆえ、フランスの強豪チームKarmine Corpは一か八かでMartin “Rekkles” Larssonとコンビを組ませたほどです。
しかし、このトルコ人ジャングラーにとって2022年は必死にもがき苦しんだ1年となり、当時はまだステップアップするのは早いと思われていました。今年のLECでDoğukanのプレイが見られるのは大きな驚きです。
プレイヤーとして成功する可能性はあるものの、現実的には彼もチームも苦戦を強いられることになるでしょう。
Excel Esports
Excelには世界的トップレーナーであるAndrei "Odoamne" Pascuがいます。Andrei “Xerxe” Dragomirは非常に頭脳明晰なジャングラーで、Vincent "Vetheo" Berriéはその若さにもかかわらず、昨年のリーグでは最強プレイヤーのひとりに数えられていました。ボットレーナーのPatrik “Patrik” Jírůは常にExcelを代表するスター選手であり、Raphaël "Targamas" Crabbéは欧州のベストサポートプレイヤーのひとりです。
まさに最有力候補のチームと言えるかもしれません。チームの各メンバーに対する評価が高いことは事実なのですが、それでも疑いの気持ちは残ります。特にこのWinter splitでは、早い段階で安定したチームワークを発揮できない可能性が高いと考えています。“Vetheo”と“Patrik”がうまくリソースをシェアできるのかが問われそうです。“Vetheo”が復帰することはわかっていますが、序盤から“Targamas”が攻撃的なローミングを行うこのチームで、一体どのポジションに収まるのでしょうか?
現段階では、Excelに期待しすぎないように注意しようと思います。
Fnatic
新しいボットレーンの加入により、Fnaticは序盤からリーグ最強チームのひとつに数えられるはずです。ただし、昨シーズンを通して一貫性のないチームだったことを私たちは知っています。
Rúben "Rhuckz" Barbosaは昨年のWorldsプレーインで2度、不死身のリザーブ出場を果たしたことからもわかるとおり、非常に有望なルーキーです。Zdravets "Hylissang" Galabovよりは安定感があるかもしれないですが、彼が担うべき責任はとても大きいものです。
そして“Rekkles”はゲームのレジェンド的存在でありつつも、かつてのような強さは見られないでしょう。G2とKarmine Corpで精彩を欠いた後の彼は、かつてのElias “Upset” Lippのように違いを生み出す存在にはなれない気がします。Fnaticとしては、他のプレイヤーたちがさらに活躍できることを願っているのかもしれません。
間違いなく非常に強いラインナップではあるものの、チームの崩壊やプレーオフでの衝撃的な早期離脱が起きたとしても驚かないでしょう。
G2 Esports
こちらも大きな期待が寄せられるチームで、 Steven “Hans Sama” LivとMihael "Mikyx" Mehleの新たなボットレーンデュオがリーグを支配しそうな予感です。Sergen "BrokenBlade" ÇelikとRasmus “Caps” Wintherが脅威となることはわかりきっています。
しかし、ここで注目されるであろうプレイヤーは、ルーキーのジャングラーMartin "Yike" Sundelinです。この若者はEU Mastersで、試合数が自身よりも6ゲーム少ないトップと、その差わずか0.1で第2位となる平均キル(5.4)をマークし注目を求めました。
才能にあふれていることは確かですが、とりわけ影響力のある役割に彼を抜擢するのは大きなギャンブルだと言えます。G2がベテランのMarcin “Jankos” Jankowskiを恋しく思うのは間違いないでしょう。Jankowski不在の今、チームはすぐにでも自分たちのアイデンティティを見出さなくてはと必死です。
Koi
イメージを一新したこのローグチームは、現役チャンピオンであること、そしてメンバーの変更が1名だけだったことを考慮すると、優勝候補の本命にならなければいけない立場と言えます。
安定感のある“Odoamne”を失ったことで、彼に頼り切っていたチームは明らかに大きなダメージを受けています。後任として、Team Vitalityでの苦い経験を経てLECで2度目のチャンスをつかんだMathias "Szygenda" Jensenが加入しています。
ローグでジャングラーのKim "Malrang" Geun-seongは、3つすべてのレーンで安定した勝利を収められるチームの実力に大きく頼ってきました。LFLでの15分間の平均ゴールド差(607)が第3位だった“Szygenda”が好調を維持できる可能性もありますが、LECで同等の活躍をするためには大きな課題が待ち受けていることでしょう。
MAD Lions
昨年加入したYasin "Nisqy" Dinçerの存在はMADにとって大きな支えとなりました。これでチームのバランスが整うかもしれません。
新ボットレーンデュオのMatyáš "Carzzy" Orságと“Hylissang”の獲得は一見ハイリスクに感じられます。キルやデス、あるいはその両方でこのコンビがリーダーボードのトップに躍り出る可能性は高いかもしれません。
NLCプレーオフではトップレーナーとしてKDA (4.4)と平均アシスト(7.7)を記録し首位を獲得したKim "Chasy" Dong-hyeonと、サポート役の“Nisqy”の加入でトップレーンの弱点をテコ入れしたことにより、クレイジーなボットレーンの新コンビを発動する準備は万全になったと言えます。
さらに、Javier "Elyoya" Prades Batallaの残留は、オフシーズン中からの取り組みが成功した証となるかもしれません。今年はMADから目が離せません。
SK Gaming
SKは、昨年Misfits GamingとExcelでそれぞれ活躍した Joel "Irrelevant" Miro ScharollとMark "Markoon" van Woenselの獲得に成功しました。ミッドレーナーのDaniel "Sertuss" Gamaniも、昨年末にかけて頭角を現し始めています。
このチームの仕上げとなるのが、LDLCの前ボットレーンデュオThomas "Exakick" FoucouとMads "Doss" Schwartzの2人です。前者は非常に有望なルーキーで、一時はFnaticへの加入が噂されていました。一方で“Doss”は、EU Mastersで平均アシスト(10.8)と第3位の実力を見せつけた後のLECへの復帰で、迷惑プレイヤーの汚名払拭を試みるでしょう。
優秀なプレイヤーはいるものの、チーム全体としてリーグを盛り上げるという点ではあまり期待していません。
Team BDS
BDSは、昨年のEU Mastersで準優勝を飾ったアカデミーメンバーに信頼を置いています。トップレーンのAdam "Adam" Maanane、ジャングラーのThéo "Sheo" Borile、そしてボットレーンのJuš "Crownie" Marušič (以前は“Crownshot”と名乗っていました)は全員昇格しました。
この3人に加わったのが、メカの天才と言われるサポートプレイヤーLabros "Labrov" Papoutsakisです。彼は過去にも“Crownie”と組んだことがありますが、Team Vitalityでは周囲からの高い期待に応えることができずじまいでした。
素晴らしいチームワークが期待できるチームで、今シーズンの序盤では対戦チームの度肝を抜く可能性もあります。ただ現時点では、このチームが今年大きな成功を収めるとは考えにくいです。
Team Heretics
こちらは、とにかく個性あふれるプレイヤーが集まるチームです。登録メンバーは混沌としており、なかでも最も驚きだったのがLEC初の日本人プレイヤーShunsuke "Evi" Muraseの加入です。それでも、このチームは可能性に満ち溢れています。
“Evi”はWorldsのステージで印象に残るプレイを何度も見せてくれました。韓国人ミッドレーナーのLee "Ruby" Sol-minはEU Mastersで素晴らしい活躍をしています。そしてボットレーンのJakob "Jackspektra" Gullvag KeppleがついにLECデビューを果たしたことに、これほど多くの人たちが興奮するのにも理由があるのです。
この一見バラバラなチームをまとめられる者がいるとしたら、それは伝説的なジャングラー“Jankos”と名将Peter Dunコーチしかいないでしょう。この2人がいるだけで登録メンバーの信頼度は高まりますが、今回のWinter Split開幕に間に合うのかが微妙なところです。シーズン後半にかけて劇的な進化を遂げることに期待しましょう。
Team Vitality
最後にご紹介するのは、すべての歯車が噛み合えば大本命になるかもしれないVitalityです。
この「歯車が噛み合えば」の部分は主に、T1 Challengersの前トップレーナーKyeong "Photon" Gyu-taeとFunPlus Phoenixの前リザーブジャングラーZhou "Bo" Yang-Boの2人が、新しいチームにどれだけ馴染めるかにかかっていると言えます。
この2人のポテンシャルは無限であり、さらにMatúš "Neon" JakubčíkとNorman “Kaiser” Kaiserの加入でチームは素晴らしい仕上がりを見せています。そしてこのチームをまとめるのが、伝説的ミッドレーナーで、昨年末ついに全盛期の実力をうかがわせる活躍を見せたLuka “Perkz” Perkovićです。
このチームは惨敗する可能性があるものの、優勝争いをかき回す存在になるかもしれません。