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12 17, 2020
12 17, 2020

ラグビーと、CS:GOおよびVALORANTの未来

ラグビー:なぜこの比較なのか?

CS:GOとVALORANTの状況

ゲームの未来

ラグビーと、CS:GOおよびVALORANTの未来

eスポーツでVALORANTはCS:GOを超えるのか、といった疑問がよくきかれます。しかし、その2つが共存できるとしたら? そのことについて、伝統的なスポーツに目を向け、とりわけラグビーの例を取り上げたいと思います。

なぜこの比較なのか?

伝統あるスポーツをeスポーツの未来の類推に用いる場合、サッカーやバスケットボール、アメリカンフットボールなど、メジャーなスポーツを選びがちです。しかし、この例では主に2つの理由からラグビーを使用します。1つ目の理由は、もともと同じルーツを持ち、互換性があるように見えること。2つ目の理由としては、私がイギリス人であり、ラグビーユニオンとラグビーリーグの分裂の例が私にとってかなり議論しやすい例であることが挙げられます。

両方の試合が共存することは可能で、必ずしもどちらかを倒すことにはならないでしょう。必要なのは、それを可能にしようという意思だけです。

背景を説明すると、1895年に「現代の」ラグビーは2つの形式に分裂しました。北イングランドの22のクラブがホテルに集まり、「ノーザン・ラグビー・フットボール・ユニオン」(後のラグビーリーグ)を結成したときです。この動きは、南イングランドに拠点を置くラグビー・フットボール・ユニオンがラグビーを完全にアマチュアの試合にとどめ、選手への報酬支払いを阻止したがったことに起因します。

この分裂は永久的なものとなり、2つは別々に発展しました。突如として選手の人数も変わり、リーグでは13人制の試合となり、ユニオンでは15人制のままとなりました。トライの点数も変わり、リーグで4点、ユニオンで5点となりました。

選手の数と点数の変更以外に、ラグビーを見に来たほとんどの観客が目にする大きな違いは、タックル後に起こることです。ラグビーリーグでは、タックルはボールの所有権がある間に最大6回までとされ、タックル後、ボールはチームメイトに戻す必要があります。トライが決まらず、もしくはボールがラインの外に出ずにタックルが6回に達した場合、相手側の前方にボールをキックしなければなりません。ボールがラインの外に出た場合は、最大6人の選手によるスクラムでプレイが再開されます。

ラグビーユニオンでは、もっと流れがあります。タックルで倒された場合、ボールを手放す必要がありますが、タックルした側のチームの立っている選手なら、誰でもそのボールを拾うことができます。これによりプレイに「ラック」と「モール」という概念が持ち込まれました。その場合、チーム同士がボールから敵の選手を遠ざけようとするか、タックル中に選手が倒れ込まないようにします。ボールがラインから外に出ると、「ラインアウト」(サッカーのスローインと同じ)でプレイを再開し、その他の反則の場合はスクラムから再開されます。

リーグの試合は元のユニオン形式の試合で1世紀先がけて有利なスタートを切り、プロスポーツとして繁栄していましたが、RFUが1995年にラグビーユニオンをオープン化(プロ解禁)すると立場が逆転しました。北のチームが自分たちの存在を維持するためにスポーツを分裂させてから1世紀後、ユニオンは自分たちもプロ解禁を受け入れることを決めました。その後の20年で、ユニオンは自分たちがリーグよりも利益のでるプロフェッショナルコードであると主張するようになりました。

ユニオンとリーグの分裂は主に金銭的な報酬を焦点としたものでしたが、ルールやコードの人気の違いは、Counter-StrikerとVALORANTという2つのFPSタイトルの新たな分裂に置き換えることができそうです。この2つをざっと見ただけで、多くの違いが簡単に見つかります。

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CS:GOとVALORANT

では、これがどのようにCS:GOとVALORANTに当てはまるでしょうか? 私には、CS:GOもVALORANTも同じように見えます。一見、両方のゲームは同じ特徴を持っていますが、それぞれのゲームに焦点を当てたときに初めて、お互いの関係に重要となる個別の特徴が浮かび上がってきます。

CS:GOもVALORANTも、お互いまったく同じ方法でラウンドを確保します。最も明らかなのは、敵チームの全メンバーを倒すという条件です。その他のラウンド勝利の条件は、プレイヤーがどちらの側かによります。つまり、テロリスト(攻撃側)であれば爆弾/スパイクを埋めて爆発させる必要があり、対テロリスト側であればラウンドの制限時間まで全滅しないか、爆弾/スパイクを爆発前に解除する必要があります。

両方の武器も似かよっており、ライフル、SMG、ショットガン、スナイパー、銃火器の選択肢があります。名前は違いますが、CS:GOのAK-47、M4A4、AWP、Desert Eagleといった武器がVALORANTではVandal、Phantom、Operator、Sheriffにあたることが容易に見て取れます。さらに両方とも購入可能なアーマーが提供されています。

2つのゲームが異なる点の1つに、ゲームのラウンド数があります。CS:GOでは、15ラウンド交代(合計30ラウンド)でプレイし、チームが勝つには16ラウンドを先取する必要があります。VALORANTの場合、12ラウンドで攻守交代し、チームが勝つには13ラウンドを先取する必要があります。2つのゲームは延長戦も異なります。CS:GOは勝者が決まるまで3ラウンドずつ、合計6ラウンドの試合を行い、VALORANTでは2ラウンド差がつくと勝敗が決まります。

最長の時間設定も異なります。CS:GOではラウンドタイムが1分55秒で、爆弾は設置されてから爆発するまでに40秒かかります。VALORANTはラウンドタイムが1分40秒で、スパイクは45秒後に爆発します。爆弾/スパイクの解除も異なります。CS:GOでは解除に5秒または10秒を必要としますが、VALORANTではたった7秒で、途中から再開することもできます。

もちろん、VALORANTのキャラクター(エージェント)がさまざまな能力を持つという事実は、CS:GOと大きな隔たりがあります。こうした能力は、実際にはCS:GOのグレネードに代わるもので、さまざまなエージェントが、光を放つ、炎の玉を投げる、煙などで視界を遮る、氷の壁を築く能力などを組み合わせで持っています。ゲームのこの部分はCS:GOよりもOverwatchに似ていますが、武器の精密さはCS:GOを思い出させます。

ゲームの未来

この2つのゲームの行く末Riot Gamesが別タイトルのLeague of Legendsと同じ道のりをVALORANTにたどらせるとしたら、地域やセクションで分けてリーグにする前に、世界各地で約1年半のオープントーナメントを行うことが想定されます。そこにはフランチャイズの可能性があり、多くの人がその可能性に期待を寄せていますが、すぐに実現するとは思えません。Riot Gamesが利益を出せるようになるには、草の根レベルの試合をじっくり発展させる必要があるためです。

一見、CS:GOとVALORANTは主な特徴が同じですが、それぞれに焦点を当てたときに初めて、個別の特徴が浮かび上がります。

ラグビーユニオンは自分たちを世界的なラグビーのプレミアコードであると主張していますが、ラグビーリーグは、特に北イングランドとオーストラリアの労働階級のコミュニティで、プロとしての展望がひきつづき開けています。これはCS:GOとVALORANTに起こりうる未来です。どちらか一方が他方より大きく成長するかもしれませんが、両方ともそれぞれの市場と強い支持者を持ち続けるでしょう。

VALORANTはまだ新しいゲームですが、多くのプレイヤーがCS:GOから「コード変え」しています。実際に、ヨーロッパと北米におけるVALORANTのトップチームの大部分が元CS:GOプレイヤーで構成されています。ヨーロッパ勢の大半は、難関を打ち破れなかったセカンドティアのプレイヤーや、数年前にCS:GOのトップティアを去ったAdil "ScreaM" Benrlitomなど数人のビッグネームが占めています。北米では、特に注目のNicholas "nitr0" Cannellaなど、最近まで競争の激しいツリーのトップにいたプレイヤーから、MDLディビジョンから突然やってきたプレイヤーまで、幅広いプレイヤーがいます。

プレイヤーは、どちらかの旨みのあるオファーに応じて、2つのゲームをしょっちゅう行ったり来たりするのか、もしくは乗り換えたプレイヤーは躍進できずに馴染みのあるゲームに戻ってくるのでしょうか? 将来、私たちはお気に入りのプレイヤーを追いかけた先にいるのでしょうか? 両方のゲームで活動し、2つの微妙な違いを学んで身に付けておく必要があるのでしょうか?

将来的にValveは、リリースされて以降怠ってきた、ゲームのプロ競技の側面をサポートすることの重要性を認識することが求められるでしょう。今後の予定はまだ不透明で、2021年の最初のメジャーはキャンセルされ、メジャーランキングイベントのステータスは未確定です。さまざまな出来事で歯車が狂い、CS:GOチームの運営は試練の時を迎えています。

この先、VALORANTも試合イベントに磨きをかける必要があるでしょう。最近のFirst Strikeのイベントでは、放送品質とトーナメント形式の両方で改善の必要性が見られました。ゲーム初の「ビッグ」イベントについては(チャンピオンシップツアーのキックオフ前)、かなり多くの課題が残りました。最近のイベントを見て個人的に思ったのが、プレイヤーモデルを洗練させ、HUDはもっとすっきりと小さくし、デスカメラの激しさを減らすこと、ミニマップを見やすくするべき、といった点です。

未来がもたらすものを正確に知るためには、水晶占いの腕を磨くか、短縮ダイヤルで神託を授からなければならないでしょう。しかし従来のスポーツのいくつかを見た結果、一目瞭然なのは、2つのゲームが共存し、一方が他方を必ずしも倒すとは限らないという可能性があるということです。必要なのは、それを可能にしようという意思と改良です。

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筆者について

Michael Moriarty

受賞歴のあるフリーランスライターとして、CS:GOとRocket Leagueを専門に、これまでに5年以上eスポーツの世界に携わっています。eスポーツとゲーム以外のところでは、サッカーチームAFC Wimbledonのサポーターであり、スヌーカーもときどき少し見ています。

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